決めた道

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 緋依が城を出たと庵から聞いたとき、利洲は守れなかったことが悔しく、守る対象が傍にいないことにも、置いていかれたことにも、自分が情けなくなった。  何も出来なかったまま終わるのかと、城内を嘆き歩いていると、ふと、この扉に目が止まった。 『ところで蒼様、私の排除の仕方はどう間違っているのでしょうか』  この赤い扉の先には、緋依の力の余韻と、緋依が自分たちと過ごした証の"何か"が、今でも残っている。  利洲は、見つけたと思った。  今、自分に出きること、自分に守れるもの。 『ぬるい』  蒼にバッサリと言い切られ、利洲はまたもや首を傾げた。  蒼は目尻を垂らし、"ニコニコ"とでも効果音がつきそうなほど満面の笑みを浮かべた。  その笑みを見て背筋に悪寒が走るのは何故だろうか――なんて、苦笑いを浮かべていた利洲だったが、続けられた蒼の話に、直ぐ様、口を引き結ぶこととなった。 『再三打ちのめされているにも関わらず、こう何度も侵入者が来るということは、貴方は嘗められているのよ』 『!!』 『痛め付けて吊し上げるなり、灰になる寸前で送り返すなりなんなりして、生かした状態で相手に恐怖を植え付ければいいと思いますわ』  どこかずれているような気もしたが正論にも思えた利洲は、指で顎を挟んで考え込んだ。  暫くすると、利洲の耳に蒼が息を吐く音と布が擦れる音が聞こえた。  蒼が立ち上がったのだ。  蒼は利洲に目もくれず両腕を前に伸ばすと、何かを唱えた。  すると、宙を漂っていた箒と塵取りが、蒼の手に引き寄せられ、蒼はそのままふたつの取っ手をギュッと掴んだ。  蒼の一連の動作を下から見ていた利洲を、蒼は横目で見下ろす。 『まさか出来ないなどと言いませんわよね。王家に遣える私の仕事を増やしておきながら、そのようなことが言えるはずありませんものね』
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