②

4/28
前へ
/157ページ
次へ
 少女の肩に置かれた緋依の手に力が込められ、緋依の爪が少女の皮膚に食い込む。  少女の肩に、痛みがはしった。  けれどその痛みは加減されたもので、悶えるほどのものではなかった。  ――死にたいの?  少女は、緋依に聞かれた問いの意味を……いや、緋依が自分に問いかけた意味を理解した。  "自分たちに敵うはずないのに立ち向かって、死にたいのか?"  女はそう言いたいのだろうと、少女は思った。  そしてそう思った瞬間に、少女は肩の痛みが和らいでいくのを感じた。  この小さな痛みなんて、"痛み"とすら思えなくなったのだ。 『死にたい……私が?』 『……』  少女の"傷"が疼く。  緋依を睨め上げたまま、右手で女の右手首を捉える。  緋依は反応を示さなかったが、少女は構わず緋依の肩に勢いよく噛みつこうとした。  恐怖を感じてしまった時から、目の前の敵を殺すことは出来ないと、少女は自分でも気づいていた。  それでも。 『お前らを殺すまで、死ねるはずがないだろう!!』  敵わないと分かっていても殺したい相手がいた少女は、死すら恐れていなかった。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加