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――――――
ヴァンパイア、黒豹に続き、トアにおいて三位の地位にあった虎一族は、街も栄え、並ぶ洋風な屋敷の造りも一件一件立派なものばかりだった。
ある日、藍色の軍服に身を包んだ男が、額に汗を浮かべながら駆け込んで帰ってきた。
『ち、父上!!長が、長がヴァンパイアの子を連れ去って来られたそうです!!』
『なんだって!?』
男の知らせに、数匹の男たちが、勢いよく椅子から立ち上がった。
近くで母に髪を梳いてもらっていた、まだ幼き頃の少女は、ブラシを持つ母の手が、ガクガクと震えていることに首を傾げた。
『では、とうとう始まるのか……』
しかし、声を震わせた少女の父の顔には、笑みが浮かんでいたから。
『ようやく、我ら虎一族の歴史が始まるのかっ!!』
父の声には、歓喜が溢れていたから。
その意味を、露とも知らない少女は、これから始まることに一ミリの恐怖心も抱いていなかった。
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