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 広場を後にした二匹は、近所の小さな公園に入ると、手を繋いだまま木製のベンチに腰かけた。  まだ朝早いからか、普段ならたくさんの子供が遊ぶ公園の中に、二匹以外の獣はいなかった。  二匹はしばらくぼうっと月を見上げていたが、香月がまた葉の髪を触り始めたから、葉は香月の方に顔を向けた。  相変わらず、香月が葉に向ける眼差しはとても優しいもので、甘くて、その微笑みを見るだけで、葉はとても幸せな気持ちになった。 『かーくん』 『んー?』 『だいすきー』    葉が家門の前で行ったようにギュッと抱きつくと、香月は『俺もだよー』と笑いながら優しく抱きしめ返した。  毎度のことながら、香月の腕の中はすごく温かく、葉は心地よさに酔いしれた。 『かーくんのおよめさんになりたいなあ』 『……』 『えへへ』  思わず口にしてしまったが、言ってから照れた葉は笑って誤魔化そうとした。  香月ならいつものように笑ってくれると思った。 『きゃあ?!』  が、突然。  葉を抱きしめる香月の腕の力がギュッと強くなり、香月は額を葉の肩にくっつけた。 『か、かーくんっ、くるしいい』 『……』  胸が圧迫されて呼吸がうまく出来ず、苦しいと訴えたけれど香月は無言で、腕の力を弛めようとしてくれない。  どうしたんだろうと困惑しつつ、このままでは死んでしまうと思った葉は、香月の背に回していた手を胸の前に持ってきて、香月を引き離そうとした。  しかし、香月にとっては葉の力なんて微々たるもので、香月は身じろぎひとつしなかった。 『っ、』 『……葉ちゃんがお嫁さんに来てくれるなら、本当に嬉しいんだけど』  もう限界!と葉が意識を手放そうとしたとき、滅多に聞くことがない、香月の弱々しい声が葉の耳に届いた。
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