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『ご無事でしたか香月様!』  二匹が香月の家につくと、屋敷の警備を任されている鎧姿の者たちが、すぐさま二匹のもとに駆け寄ってきた。 『俺は大丈夫……被害はどうなの』  香月が尋ねると、集まってきた者たちはみな、ぐっと言葉を詰まらせた。  そして、先頭に立つ者が苦虫を噛み潰したような顔で答えた。 『……たった数時間で、長の屋敷と関わった者たちの屋敷は、全て。ここも、時間の問題でしょう』 『……』 『おそらく、アイツらも香月様まで手を回さないと、お館様はお考えです……逃げろ、と』 『!だけど、』 『中心に関わってしまった葉様の屋敷も、既に全滅しております……葉様をお守り出来るのは、もう香月様のみなのです』  香月と、警備の者たちの視線が、葉に集まる。  話の内容を理解出来ないながらも、ただならぬ雰囲気に口を閉ざしていた葉は、香月とおとなたちに見下ろされ、慌てて香月の腕に抱きつき顔を隠した。  そんな葉の頭を、眉を垂らしながらも香月が愛しそうに撫でる。 『葉ちゃんを選ぼうとしている俺は……父の子として、恥ずかしくないのかな』 『……、屋敷の者ならば香月様のお気持ちを皆承知でございます。むしろ、誇らしいとさえ思うでしょう』 『……』 『時間がございません、さあ』  香月は瞼を閉じて、数秒悩んだ。    しかし、香月は腕に在る葉の温もりに、意を決したように瞼を持ち上げると、屋敷を見上げた。 『……すまない』  香月はそう一言落とすと、カッ!と目を大きく見開いた。  香月の体が、一度びくりと脈うつように震えた。  骨格が変化し香月の細身の体は肉をつけ、四つん這いになると、皮膚からは黄金の毛が足から頭部に全身に生えた。  耳はヒトと同じものではなく、猫のように二つ頭部に移り、爪は獣を狩るための鋭いものに。  香月は一瞬にして、その身を黄金の毛を持つ虎の姿へと、“獣化”させたのだ。 『……葉ちゃん、乗って』  香月はヴァンパイアの瞳よりも鮮やかな赤い光を放つ目で、葉を見た。
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