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 名を呼ばれ驚き葉は口を開きかけた。   『“約束守れなくてごめんね”』  だが、再び発せられた黒豹の声に遮られ、声を発すことなく閉じた。 『“でもお願い、葉ちゃんは生きて”』 『っ!!』  なんの脈絡もなく淡々とした口調で紡がれる言葉が誰からのものなのか、葉には言わずとも解ってしまった。  胸の奥で浮かぶ優しい笑顔。 『……伝えて欲しいと言われたから約束通り伝えた、後は好きに選べ。』  “葉ちゃん” 『か、かーくんを、かーくんを、』 『ああ……殺した』 『――』  あっさりとした肯定の声に、世界がモノクロの景色になり……音が飛ぶ。  “ほんと――葉ちゃんが欲しいよ”  しかしそんな現実逃避は一瞬でしか許されず、直ぐに世界は容赦なく葉に色と音を戻した。  葉は、両の手のひらで顔を覆った。  俯くと垂れる金色の髪に、葉の脳裏に浮かぶ香月の笑顔がさらに濃くなる。 『少年を追い死ぬか、少年の願い通り生きるか……さあ、どうする』  追い討ちをかけるように、葉に問いかける黒豹。 『あ……あ、』  ――生かせ、と命じた“姫”を、この黒豹は残酷だと言っていた。  だが、葉にしてみると、この黒豹もまた、残酷だった。  何故選択肢を与えたのか。  何故香月からの伝言を伝えたのか。 『あ……あ……か、くん、……かーくんかーくん、かーくんっ、あああああっ!!』  香月が自分に“生きて欲しい”と望むことを知りながら、死を選ぶことなど、葉には出来るはずかなかった。
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