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――――――――― ――――――― ――    かつてトアの身分制度において、虎一族は黒豹族と同等の地位にあった。  しかし“姫の餌”を捕らえたことにより、長はもちろん、この騒動に少しでも関与した者、又は其の家族、又は其の従者、又は其の従者の家族。  葉のような未成獣の女子を除き、皆容赦なく殺された。  虎一族の愚行は全ての一族に伝わり、今も尚、戒めとして伝えられている。  一切騒動に関わらず制裁を受けなかった者たちも、必死に再び一族を繁栄させようと頑張ってはいるが、もはや身分制度の地位とは名ばかりで、他の一族への権威など無に等しい。  虎一族は過去の地位はおろか、下手をすると最下層並の立場となってしまった。 ◆◆◆ ーーーーー  刻印を刻まれ生かされた女子たちは、姫の手によりそれぞれ王族や貴族の餌となった。  そして葉もまた、そのうちの一匹だった。  黒豹に捕らえられた葉は、気がつかぬうちに意識を失い、意識を取り戻したときには肩に刻印が刻まれ、見知らぬ屋敷の一室にいた。  ベッドの上で瞼を開けた葉は、自分の上に股がる見知らぬ男を見て悲鳴をあげた。  しかし男は、暴れ狂う葉の両手をやすやすとベッドに押し付けると、黒豹のそれよりも小さく先が鋭利に尖った牙を、葉の首筋に突き立てた。  痛みと恐怖に混乱した葉は、ただただひたすらに、悲鳴をあげ続けた。
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