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数年の月日が経った。
与えられた漆黒のドレスに身を包んだ葉は、成獣の儀を行う歳をとうに越え、かつての香月の身長をも抜かし、立派な“女”となっていた。
餌となった今、葉の肉体がこれ以上衰えることはない。
『くそ……くそ!!』
葉は吸血行為の度に、快楽に屈してしまいそうになる自らの体と戦い、そして墜ちていく自分の情けなさと悔しさに、込み上げてくる涙が止まらなくなる。
『喘ぐ度にお前が叫ぶ“かーくん”とは、お前の好いている者か?………くくっ、無念だな』
けれど名も知らぬ葉の主は、葉が嫌がる姿を楽しむかのように笑い、噛みつき、血を貪った。
『う……んあっ…』
『お前の血は、旨い』
屈辱に震え、憎しみばかりが増やていく日々。
舌を噛みきり死のうとしたこともあった。
けれど、直ぐに傷が塞がり血は止まり、瞬きする間に、皮膚は何事もなかったかのような状態になる。
『かーくん、かーくん……もう、嫌だよ』
主が死ぬまで死ぬことを赦されないと知ったとき、葉の胸のうちに絶望が巣食った。
しかし数十年後、葉はさらなる絶望を知ることとなる。
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