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自宅の駐輪スペースに自転車を止めると、明日香はカゴに入れていたスクールバッグを引っ掴み、玄関の扉を開け、家の中へと駆け込んだ。
「たっだいま!」
「お帰り……って何その犬!!」
明日香が暖房の効いたリビングに入ると、金髪の少年がマグカップ片手にソファーに座っていた。
少年はーー明日香の弟、浅田陽太(ようた)は、明日香の懐から顔を出す子犬を見て、頬を引き吊らせた。
「拾った!」
「ふざけ、って、わぁああ! 馬鹿、近づけるな!」
明日香は子犬を抱きしめながら、陽太に近づく。
「お姉さまに向かってバカってなんだ、バカちん」
「いい、いいから! わかったから! ~っ近づけんなって!」
「え~」
「"え~"じゃねえから!」
「あははっ、……って、遊んでる場合じゃなかった!」
「ぎゃあっ」
ソファーにへばりつく陽太に、どんどんと近づいていき、からかっていた明日香だが、腕に子犬の震えが伝わり、慌てて陽太の背後にかかっていた毛布を引ったくった。
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