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宙に浮くロウソクの灯火のみが、灯りとなる長い廊下。
床には真っ赤な絨毯が敷かれ、天井には大きなシャンデリアがいくつも浮いている。
壁にかけられている肖像画のヴァンパイアたちの瞳が、廊下を歩く緋依たちを追いかけるかのように、動く。
緋依の右半歩後ろを庵が、庵の後ろを銀色のマントを羽織った黒豹の老婆――蒼と佳が、神妙な面持ちで着いて行く。
四匹が黙々と足を進めていること数分、廊下の先に、散りばめられた薔薇の花びらのような、真っ赤な扉の姿が見えてきた。
そして扉の前には、緋依ら一向に、片膝をたてて頭を垂れる姿が三つ。
チッ――と、舌打ちの音を聞いた緋依は、自分の右半歩後ろに立つ男の表情に、思わず苦笑いを浮かべる。
「「お帰りなさいませ、姫様」」
緋依たちが赤い扉の前で足を止めると当時に、頭を垂れていた三匹は一斉に口を開き、声を揃えた。
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