おにいさま

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 ゴゴ……ゴ……。    赤い扉を開けた時とは異なり、誰も手を触れること無く、黒く大きな扉は、轟音を立てて、左右に開かれていく。  隙間から流れ出てくる“力”に、秋は思わずごくりと喉を鳴らした。  秋に怒鳴り付けられてもものともしていなかった葉も、ぶるっと肩を震わせており、葉の隣に立つ、いつも冷静沈着な利洲の背筋にも、冷や汗が流れていた。  三匹は、恐怖とはまた違う、圧倒的な"力"に、身が押し潰されそうなほどの圧迫感を感じていたのだ。  扉が完璧に開ききると、緋依は迷うことなく扉の中へと足を踏み入れた。  すぐに庵が緋依の後を追い、佳と蒼はそれぞれ扉の左右で立ち止まり、二匹の間を通り、利洲たち三匹が続いた。  そして、緋依らを閉じ込めるかのように、扉は再び轟音をたてながら、閉まり始めた。
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