王家の秘密

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 緋花には王の意図はわからなかった。ただ王に言われるままに、王の名を呼んだ。 「……緋羅」   緋花が王の名を呼んだ瞬間、王……緋羅(ひら)は緋花に深い口づけを落とした。 「んっ……ひ、ら…」  永遠にし続けるのではと思うくらい、長く、長く……。  やがて、緋羅はゆっくりと緋花の口から離れると、緋花のトロンとした緋色の瞳を名残惜しそうに見つめながら、確かめるように言った。 「緋花は、産みたいんだよな?」 「……」  力なく、だが確実にコクリと頷いた緋花。緋羅は愛しそうに目を細め、火照った緋花の頬を左手で触れると、優しく笑った。 「なんとかしてやる」 「……ほん、とに?」 「私に任せろ。というか、手はすでに考えている」  緋花は自分の頬を触れる緋羅の手に、自分の手を重ね、ポロポロと涙を溢した。 「ありがとう緋羅……愛してる」 「私もだ……」  緋羅はもう一度緋花に軽い口づけをすると、ゆっくりと何かを唱えた。  緋羅の瞳が、赤く光る。
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