王家の秘密

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 緋花は崩れ落ちた緋羅の体を支えながら、自身の身体の中の変化に気付き、緋羅がしたことを理解した。 「なんで……なんで!?」  緋羅の身体からは、普段緋羅から溢れ出ている力が、一切感じられない。  どんなヴァンパイアであろうとも、力が存在しないなんてことあり得ないのに。 「こんなこと……して欲しかったわけじゃないのに!」  ヴァンパイアの力がなくなるのは死んだときだけだ。  けれど、ヴァンパイアは命が絶えるのと同時に、必ず灰になる。  緋羅の身体は灰になっていない。  緋羅の力はなくなった。  でも緋羅の力は在る。   緋羅は死んでいない。  しかし緋羅は死んだのだ。  緋花は、自身のお腹を両手で守るように優しく抱き締めた。 「緋羅……緋羅っ!」  緋花の頭に、つい先ほど自分の頭を撫で、優しく笑った緋羅の顔が浮かぶ。 『転生術』  緋花のお腹の中で、緋羅は生きている。  けれど緋花の横には、緋羅の屍が横たわっていた。
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