王家の秘密

7/29
前へ
/157ページ
次へ
 寝室で緋羅の存在を腹に感じながら、緋花は、初めてもう一つの魂の存在に気がついた。   腹に宿った赤子は、双子だったのだ。 (緋羅でない方の魂の子の存在など、皆が許すはずがない!)  焦る緋花の頭に、一つの方法が思い浮かんだ。   『忘却術』  緋羅の記憶がなければ、緋羅の魂を宿る子に、緋羅の力は目覚めない。  どちらの子が緋羅の魂を持つかわからなければ、不満を抱く者たちも、安易に子に手出しはできないだろう。  ただそれは、緋羅の魂を持つ子が死ぬまで、『緋羅』に会うことは出来なくなるということであり、ヴァンパイアの果てしなく長い寿命を考えれば……緋花はもう二度と、緋羅と会うことは出来なくなるということであった。 「緋羅……っ」  緋花に、決断を迷う暇などなかった。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加