王家の秘密

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 元老会とは、王家の血は受け継がないものの、高い能力をもっていたり、多くの他一族を従えていたりと、力のあるヴァンパイアたちの、集まりである。  王家と意見がぶつかることも多々あるが、基本的に、ヴァンパイアの権威を他の一族に見せつけることを主な活動としており、王家の補助という役割も担う。  そのため、王家の間違った行いは、自分たち(元老会)が正さなければならないという思考を持つ。  そして緋花の予想通り、緋花に双子が産まれたと知った元老会上層部の者たちの間では、緋羅の魂を持たない方を殺せ、という意見が飛び交った。 「早く、王の魂を持たない子を林へ」 「いや、どちらが王かわからぬのだ」  しかし、どちらが緋羅なのかは、二匹の自我が目覚め、緋羅の記憶が目覚めるまではわからない。  そのうえ、緋花が子に『忘却術』をかけた為に、本来なら魂が眠っている状態でも溢れるほどの緋羅の力が、一切感じられない。 「瞳の色は?」 「どちらも緋花様の瞳を受け継がれたようで、緋色だ」  緋花が唯一心配していた、王家の血を受け継ぐ証の一つである、瞳の色も、なんとかなり、緋花は二匹を守れたことに、安堵していた。  ――だが、どうやら緋花は、王家の血を尊ぶ者たちを、甘くみすぎていたらしい。  ある日の昼時、城門前に灰色のマントを羽織ったヴァンパイアたちが集結していた。  騒ぎを聞きつけ、城門前に足を運んだ緋花の目に飛び込んできたのは、衣服もまとわずに地に転がる、所々皮膚が黒く焦げている赤子。  その赤子は、緋花の子の一匹だった。 「林に捨てた子が!」 「なっ、赤子があの林から自力で出られるなど!」 「こちらの子が王でらしたのか!?」 「だが力は……」  力無き者を燃やし尽くすはずの林から、何故まだ幼い赤子が自力で出ることが出来たのか等、緋花にはどうでもよかった。  赤子の苦しみが全くわかっていないらしい元老会の者たちへの殺意に溢れ、緋花は瞳を赤く光らせた。
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