王家の秘密

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――二匹が産まれてから、十二年の月日が流れた。  十二歳で成獣と呼ばれるヴァンパイアは、"成獣の儀"を終えると初めて『餌』から血を吸う吸血行為を行う。  牙の成長が完全に止まるのが、個々で多少違うものの、基本的に十二歳が目安とされているからだ。  緋依の初めての吸血行為も、緋依の白いベットの上で今まさに終えたところであった。  ベッドの上で仰向けに寝転がる庵の上に、緋依が跨がり左手で庵の頭部を支え、右手で庵のワイシャツの襟元を掴む。  綺麗に吸うことが出来なかったのか、シーツには鮮血が染み付いていた。 「ねぇ庵、お兄様がどちらにいらっしゃるか知ってる?」  上体を起こし、顎についた血を手の甲で拭いながら、緋依は庵に問いかけた。 「先ほど、緋花様のお側にいらっしゃるのをお見かけいたしましたが」 「そっか……」  何かを考え込むような緋依に、庵は首を傾げる。 「どうかされましたか?」 「……」 「姫様?」 「……ううん、何でもない。それより庵、」 「はい」 「……我慢は、体に毒よ?」  吸血行為の最中、声をこらえようとするあまり下唇を強く噛み締めていた庵の唇を、緋依は指先で優しく撫で、クスリと笑った。 「っ、明日、姫様も私の気持ちが分かりますよ」 庵の頬が真っ赤に染まり、ふい、と庵が緋依から視線を逸らす。 「ふーん……あ、ねえ。交代してみよっか」 「え……私は、明日のはずですが」 ―――――――  緋依と庵が吸血行為を行っているのと同時刻。 城内のある一室にて、同じように吸血行為が行われていた。 「う……やっ…」  部屋には男がズズッと血を啜る音と、女の快楽の喘ぎ声が響く。  女は目に涙を浮かべ拒絶の声をだしながらも、自身の血を吸う"男"を強引に押し退けることが出来なかった。 「なん……っ、でぇ……つっ!」 「……」 「んっ、」  女が声をあげると"男"はズブッと艶かしい音と共に、牙を抜いた。
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