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「……緋花様?」
緋花の文を持つ手がわなないていることに気がついた黒豹が、緋花に声をかけた。
「……」
「っ、」
黒豹の声に反応した緋花が、ゆっくりと顔を上げると、黒豹はびくっと肩を震わせて、その場から飛び退いた。
(――まずい)
頭を垂れている元老会の使者たちは気がついていないようだが、黒豹は緋花の瞳が赤く光っていることに気がついた。
「この…を………のは…れ」
緋花はその瞳を女に向け何かを言った。
しかし、声が小さくて女は聞き取ることができなかった。
「申し訳御座いません、もう一度……、うっ!?」
女が、再度緋花に尋ねようとしたところに、緋花の手が女のマントの襟元へと伸び、緋花は女を自分の方へ強く引き寄せた。
緋花に頭を垂れていた女は驚き、思わず顔を上げ、至近距離にある緋花の瞳と目を合わせる。
瞬間――女は硬直した。
女の後ろで顔をあげた男は「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、顔を青ざめた。
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