王家の秘密

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「ああ……申し訳ございません」  緋花が眉を寄せ笑い声の主に視線を向けると、小柄な者はぴたりと笑いを止め、とても反省しているようには思えない口調で、緋花に謝罪をした。  だが、秒も待たずに小柄な男はすぐにまた肩を揺らし始め、小柄な者の隣ではしゃがれ声の男が右の手のひらで自らの目を覆い、呆れたような溜め息を吐いた。 「何が可笑しい」  戸惑いを隠すように、緋花は拳を強く握り締め、二匹を睨み付けた。  しかし、それに二匹が動じた様子はない。  それどころか、小柄な者は更に大きく肩を揺らし始めた。 「もしも……、」  代わりに答えるかのように、そう切り出した、しゃがれ声の男。  緋花は再び視線をスライドさせて――。 「もしも我々の考えが外れ、緋依様の牙跡が緋恋様によるものでないのであれば―――、―――」  かつての伴侶に、緋羅に。  もう一度、もう一度だけでいいから、強く抱き締めて欲しい、そう切に願った。 (――何が、何がどうして、何故こんなことになった?)  昨日から自分の中で何度も繰り返されるこの問いに、緋花は答えが見つからない。
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