メリーゴーランド

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僕はそれでも岳ちゃんと一緒にいるだけで楽しかったのに、岳ちゃんは何か僕にも乗れるものがないかって考えてくれたみたいだった。でも、さすがにメリーゴーランドなんて、乗ってるのは小さな子ばっかだし、僕は岳ちゃんが冗談を言ってるんだと思って首を横に振った。 「どうせガラガラだし、誰も気にしないよ。俺も一緒に乗ったげる。」 「ええっ、岳ちゃんも?」 最初はすごーく恥ずかしかったけど、岳ちゃんと一緒に並んでクルクル回るのは凄く楽しかった。木馬は意外と高く上って、身体がフワフワ浮く。僕らの他にメリーゴーランドに乗ってたのは、小さな女の子と一緒のお母さんだけで、誰も僕らのことを気にしてない。 僕が「一緒に乗ってくれてありがとう。」って言うと、岳ちゃんはそれからコーヒー・カップとか、他にも色んな子供向けの乗り物に一緒に乗ってくれた。 「今度なに乗ろうっか?」 「え、あ…。」 そう言いながら岳ちゃんが僕の手を軽く握って歩き出したから、僕はもう何に乗りたいかなんてどうでもよくなって心臓がドキドキしだした。手に汗とか掻いちゃったら嫌だと思うけど、自分から手を外すなんてできなくて、そうやってしばらく岳ちゃんに手を取られて歩いてた。 「どうしたの?」 赤くなったまま俯いて歩いてる僕に、岳ちゃんが足を止めて不思議そうに聞いた。その途端、岳ちゃんの手から力が抜けて僕の手が滑り落ちそうになったから、思わず僕の方から岳ちゃんの手を握り返した。
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