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「あ、おはよー! クラス別々だねぇ。ってうわ、フミ君髪切ったのぉ?」
目当ての姿とは下駄箱で出くわすことができた。
靴を履き替えていざグラウンドへ、と踏み出した矢先にばったり、だなんて偶然にしては出来過ぎているが、それ以上の偶然が涼子や黛との間に起きていることを考えれば、むしろ微弱なものかもしれない。
「おはよう、成宮さん。うん、まあ、ちょっと。……早速友達が多いね」
成宮瑠維。
一言で言えば、かわいらしい花のような少女だった。
ぱっちりと開かれた瞳を長い睫毛が縁取り、血色の良い頬は薄い朱が色づいている。
肩に届く程度の髪は、ほっそりとした首のまわりにふわりと軽やかな曲線を描いていた。
決して細すぎないすらりとした身体でも出る所はきちんと出ており、スカートから伸びた足は細身ながらも女性的な肉感を適度に持って地を踏んでいる。
声をかけられた瑠維はふふんと鼻を鳴らすと、いたずらっぽく応じた。
「そりゃねぇ。ルイはもともと馴染むの早いんだもーん」
甘ったるい声に、一人称が自分の名前。異性である安土のことも下の名前からもじったあだ名で呼んでしまう。
お姫様気質がそのまま身体を得て絵本から飛び出したような少女だが、その核たる部分はシビアで、時に安土や涼子を叱咤する。
もっとも暴走しそうに見えるが、実質ストッパーの役割を果たすような、不思議なバランスを持っていた。
瑠維は安土が感嘆したとおり、既に数人の女子と行動を共にしている。
それが彼女のコミュニケーション能力の賜物なのか、それとも去年から顔見知り程度ではあったのか、安土と涼子にはよくわからない。
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