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十分に人目を惹く容姿である瑠維と安土が会話を交わしているとなれば、また何人かの生徒からも注目を集めることとなった。
しかし片方はそれに意も介さず、もう片方は気付くこともない。
この二人の仲は十分に友達と呼べるもので、話す事も一緒にいることも、お互いにとってはさして特別なことでもなかった。
「部活で会うとはいえ、去年みたいにずっと一緒にはいられなくなっちゃうねぇ。……あと」
偶然から漏れたことを残念がる言葉の次に、瑠維は涼子を安土から引き離したかと思えば、その耳元でなにごとかを囁きかける。
時間にしてほんの数秒。
大した用件でもないだろうし、瑠維がそういった行動を取るのは以前からよくあったので、安土にとって気にかけることではなかった。
「それじゃーね。また部活始まったらよろしくぅ」
にっこりと笑って手を振った瑠維は、元いた輪へと足取り軽く戻っていく。
一方取り残された涼子が胸元を押さえたまま俯いているので、さすがの安土も声をかけた。
「どうしたの? また何か変なこと」
「だ、大丈夫! なんでもない、なんでもないから。私達も行こう?」
言い切るより早く、遮るようにして涼子は否定する。
涼子がこういう態度を取ることもよくあったので、本人がなんでもないと主張するのならば仕方がないと、これもまたあまり気にしないでおくことにした。
てんで正反対だったり、似たもの同士のようで食い違いのあったりする三人は、こうして無意識ながらも奇妙なバランスをとっている。
ちょうど一年ほど前はそれぞれ問題を抱えたままでもっとぎすぎすしていたのだが、今やそれは過去の話へと追いやられていた。
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