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なにかと個性的なこの学院のもうひとつの個性として、独特の制服もまた無視できない要素だ。
男子はグレーのスラックスに淡い青のシャツ、その上に白いブレザー。
女子はプリーツの入った白いワンピースに、前の丈が短く後ろは長いブレザーを上着として羽織っている。
ワンピースのスリットの内側はピンク色の生地が使われており、裾の裏地にも三センチ幅ほどのピンク色のラインがぐるりと描かれていた。
これは勝手にスカートを短くしたり改造したりできなくなる工夫で、生徒達の身だしなみを一定のレベルで保つのと、服装検査の際は目安として役立っている。
珍しいのは色だけな男子制服と比べ、女子制服の特殊ぶりはちょっとばかり有名だった。
さて、そんな個性的な制服もこの学院内では当たり前のものだ。
春の陽光を受けた白い制服がひしめき合う光景の眩しさに目を細め、安土は改めてこの学院の生徒の多さを事実として受け止めた。
自分など、そのうちのたったひとりにしかすぎないのだ、とも。
自らを矮小なものとして捉える癖は不必要な場合でさえ彼に囁いて、染み付いた卑屈さを煽り立てるのだった。
往々にして、始業式なんてものは退屈である。
特に春先の陽気で、陽だまりの中に放られた生徒数千人ともなれば、何人か居眠りしていようが携帯を弄ろうが教師の目には付きにくい。
これが冬場であれば、寒さとの戦いを耐え忍ぶ羽目になるが、生憎今日は天気も快晴。
さらに春休み明けのぼけた頭ばかりときて、意識を完全集中させている生徒はごく一握りだった。
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