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「この後、どうする?」
今度こそ訪れた放課後。
つい先ほど風紀委員の立場に収まった涼子が尋ねる。
今日は始業式ということもあって、部活動は基本的にない。
ないというよりはやらなくてもいいと表現したほうが正しいもので、活発な部活に所属する生徒は昼食をとった後に部活動、となる。
これで平常授業が開始すれば、平日五日間はどの部活も活動する、というよりしなくてはならなくなるのがこの学院の決まりだった。
「部室、見るだけ見てみようかな。長いこと開けてないし」
とくに考え込む様子もなく、安土は即決する。
涼子もそれに頷くが、その表情にすぐさま不安が翳った。
「あ、でも鍵あったかな……成宮さんが持ってなかった?」
「オレ達が開けなくても、先輩が来てると思う」
そういったことを気にしそうな、いや、実際気にしていた先輩に心当たりがある。
換気だなんだと言って、一人ででも部室に訪れていそうだ。
部室の鍵は二年生と三年生がひとつずつと、顧問である黛が持っている。
安土と涼子のどちらの手元にもないが、瑠維に借りにいくか先輩が鍵を持ってくればなんの問題もない。
瑠維が持っている可能性は薄いと断じた安土は、瑠維に声はかけずに部室に向かうことにした。
「部活、行くの?」
と、不意に声をかけられたのは安土のほうだった。
聞き慣れない声色に振り返る。
そこにいたのは、人懐こい笑みを浮かべた転校生――那賀朋之。
放課後になったというのに、彼は誰からの束縛も受けていなかった。
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