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あるものは部活に、あるものは空腹を感じつつ帰路につき、またあるものは教室から動く気がないといった様子で談笑に耽っている。
そういったグループのどこにも属せなかったのか、それとも属さなかったのか、安土にはわからない。
それでも那賀が自分達を選んで話しかけてきたことは事実で、少々戸惑いながらも頷きながら応じた。
「う、うん。活動があるわけじゃないけど……」
「俺もちょっと見学していい?」
その要求のあと、安土からの返事より前に、黛からこう言われたのだ、と説明した。
放課後間違いなく暇な生徒がいるということ。
わからないことはそいつに聞けば問題ないこと。
黛が顧問だからそいつの部活への影響は心配いらないこと。
それから――部活のこともそいつに相談するのが一番いい、こと。
「正直俺もよくわかってねーんだけど。……ところで、カノジョ?」
黛のアバウトすぎる助言に対してけらけらと笑うと、今度は視線を安土の傍らに佇む涼子へと移す。
危惧していた誤解をされて、涼子はびくりと身を震わせ、悪戯の見つかった子供のような顔をしてかぶりを振った。
「違うよ。オレらは部活が一緒の友達」
普段通りの落ち着いた声色で訂正する。
これの相手が涼子でなければ、自分なんかとそんな誤解をされてこちらが申し訳ない、だなんて卑屈思考回路に突入していた。
そうでなく平静を保っていられるのは、涼子のことを信頼しており、頼り頼られる関係でありたいがために多少のことは気にならないからだ。
もちろん、『友達として』。
男女でいれば恋人であると見做される感覚についても共感しておらず、不思議なこととして認識しているがゆえの落ち着きだった。
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