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「たまに言われるけど、別に面白くないよ?」
「言われるってことは面白いんだよ」
それじゃあレッツゴー、と安土の背中をばしんと叩くと、彼の胸中など知らぬ那賀は有無を言わさず案内を促すのだった。
安土と涼子の目的地は、部室棟の最上階にある。
那賀はそれに勝手についてくる形で同行することとなった。
最初こそ猜疑心を隠さぬ態度だった安土だったが、階段を上り始めたころには元来の真面目さが顔を出すようになる。
「ここは通称『部室棟』。文化部の大半とその……一部運動部の部室はここ」
そんな義理などありはしないと数分前なら思考回路に交わりもしなかったであろう『転校生の案内』という役割をそれなりに意識していた。
結局他人には甘さを捨てきれないのだ。
グラウンドや体育館を使う部活用に、ここより規模の遥かに小さいプレハブがそれぞれ別にある、と付け足しても那賀には右から左。
「……へぇ、そう。ドアの間隔が一定だし狭いな。安アパートみたいだ」
「その表現はあながち間違いでもないかも」
教室のある校舎、通称教室棟とほぼ同じ規模の建物だというのにその中身が全て部室であると説明を受けた那賀は、途中の階で廊下のほうへ寄り道すると興味深そうにあたりを見回す。
そっけないアルミのドアが並ぶ廊下の灯りは点いておらず、閑散とした雰囲気とともにもの寂しさすら漂わせていた。
というのも、始業式から活動している部活が利用している部室はさほど多くないからだ。
人が居たとしても、そういった積極的な部活の部室は下の階のものが宛がわれるために今三人がいるフロアに人の気配は皆無だった。
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