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涼子を救った『仲間』には安土も含まれており、なにかあれば力になりたいと思うのは、ごく自然なこと。
仮にそれが無理だったとしても、安土はひとりだろうと言ったことはやりきってみせるだけの強さは持っているとも信じている。
そして今の状況も、涼子を信頼していないからというよりただ彼が卑屈だからである、と説明できてしまうことも本当は分かっている。
涼子にはそれが一番悲しかった。
頼られたって困惑することはあれど、迷惑だなんて思わないのに。
――自己評価よりもっとずっと素敵な人だって、どうして自分でわからないんだろう。
「ひとまずうちにおいでよ。お昼どきだから長い話はできないけど、きっと頼りになりそうな先輩が来てるから……」
安土はとりあえず今はダメだとして、自分が取り仕切るしかないと判断した涼子は那賀に提案する。
落胆の滲む声ながらも、現実を見失ってパニックになったりはしないのだから、彼と比べるとこちらのほうがいくらか柔軟だった。
人ひとりのキャパシティを超えるものは早いうちから周りに助けを求めないと結果的に周囲に迷惑を与える事態になりかねないことを知っている。
那賀の件がそれに該当するかわからないが、考えを募るなら頭数は多いに越したことはない。
目の前でどんよりと沈んでいる卑屈星人に困惑しつつも、その間に立つ眼鏡少女はだいたいまともなのだと那賀も把握した。
何故、黛はこいつに頼れと言ったのか。
信頼するにはいまいち頼りない華奢な少年を一瞥してから、那賀は涼子に頷く。
「……分かった」
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