思いでの墓標

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  「あれ、那賀君はそれも知らずに二人についてきてたの? っと、ちょっとごめんね。換気だけさせて」 顔だけ軽く振り返って問いかけながら、麻衣は最奥の窓を開け放つ。 春休み中に入れ替わることのなかった空気が、風によって新鮮な外気と混ざっていった。 本当は軽く埃をはたく程度の掃除までやろうかと思っていたのだが、後輩らがいることだしそれは明日でもいいだろう。 それを口に出すと気に病みかねない子たちだから、言わないでおく。 「んー、今日はあったかいね。いい天気でよかった」 春の暖かな陽気が惜しみなく降り注ぐ窓際でどこか嬉しそうに呟く麻衣は、その後ろで冷えた空気を醸しだす三人とは対照的だった。 結果的に、麻衣がひとりだけでやろうと思っていたことを邪魔するかたちになってしまったが、ここは来るものを拒まぬ完全自由参加の部活。 こういったことはままあったため、彼女もさして気にしてはいない。 物理的に空気が入れ変わっているはずなのに、場の空気は真冬のように冷たく重い。 さて、と一つ息を吐いてから、麻衣は窓を離れた。 「まあ、あの……うちの部活は、えっと……どこから説明したらいいのかな」 「それは後ででも大丈夫だと思う。まず那賀君のことをなんとかしよう?」 那賀へ説明しようとして言い淀む安土に、涼子が助け船を出す。 理解が困難な部名のことを知りたいという気持ちは当然那賀の中にあったが、それの優先順位はさほど高くない。 「あと、ここについてあんまりおおっぴらに言わないようにしてくれる? また今度説明するから……」 「……わかった」 そして涼子はもう一つ念を押す。 それがさらに那賀からの不信感を煽ることになるのだが、それよりも秘匿すべき事情があったために最優先で伝えた。  
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