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部室の中は奥に広い長方形の空間で、教室の半分か三分の一程度の広さがある。
入って右手側には簡素なものながら流しとガスコンロが据えられ、そのさらに奥には引き出しを積み重ねたような棚が置かれていた。
部室の中央には背の低い大きなテーブルが鎮座し、その両脇を挟むように三人がけのソファ。
「とりあえず、座って」
安土は那賀に、そこへと座るように促す。
部室と言う割には目的が見えない上あまりにも寛げすぎた空間が落ち着かず、那賀は安土と涼子の向かいのソファへ腰を降ろしながらも周囲を見回した。
最奥には窓がふたつ。その真上に、教室にあるものと同じ時計が掛かっている。
右側の窓は、いくつもの本が並んでいる事務用デスクによって少し阻まれていた。
それとセットのはずの事務用椅子はテーブル側に引き寄せられており、普段デスクをデスクとして使う人がいないことを伺わせる。
そんな事務用椅子には麻衣が座って、そのすぐ脇に鞄を降ろした。
すぐに鞄を取って立ち上がれるような位置どりで、必要とあらばすぐに出て行くという意思の表れかもしれない。
ソファはあくまで二年生達のものとして譲るという姿勢は、傍観するか我関せずなのかだろうと那賀に思わせた。
振り向けば部室の入り口脇にも教室のものと同様の木の椅子やパイプ椅子がいくつか積まれており、これが全員座れる前提で用意された数なら部員数はせいぜい二桁に届いた程度なのだろうと予想する。
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