思いでの墓標

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  「一回、水谷先輩に部活のリストを貰ってこよう。それを見て、ぴんときたのがあれば……」 安土の提案は現実的なもので、これ以上この場での進展は望めないとわかっての言葉だ。 このままでは答えに近付くどころか余計に絡まってゆくばかりになる。 時間も経ってしまっていて、これ以上那賀を拘束するには忍びないほどに日は高く昇っていた。 まずは一度仕切りなおすべきである、それに涼子も首肯で返すと那賀へと不安そうな目を向ける。 「いや、いいよ」 しかし、それを明るい声色が拒んだ。 「自分でてきとーに探すわ。……ありがとな、もういいよ」 那賀の選択は完全な拒絶だった。 三人に全てを話す気もなく、これ以上頼る気もないという通告で、かすかな笑顔には無理と翳りが見える。 それは仮面としての笑顔ではなかった。 気にかけてくれた三人への感謝として、最後くらい穏やかにやろうという彼なりの気遣いである。 全面的に信頼したわけではなくとも、貫くべき義理を通さないほど非常識ではないし、当然彼らの好意はありがたいものとして受け止めるつもりはあった。 だけどそれだけ。 しかし、それはさらなる困惑を生むこととなる。 「……え? え、なんで」 「なんで、って」 動揺したように聞き返してきた空色と濃藍の瞳が那賀のことすら惑わせる。 そんなことはこっちが訊きたかった。 出会ったばかりの転校生に、先生から頼まれたというだけで、食いさがる理由はどこにある? 「俺、まだこの学校入ったばかりだぜ? これから見る時間なんていくらでもあるし、聞いた話じゃ選択肢だってよりどりみどりなんだろ? 大丈夫だって」  
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