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麻衣はぽんと手を叩くと、この場の湿っぽい空気を吹き飛ばすかのようにはっきりとしたトーンでこう続ける。
「那賀君、いつまでに部活決めろって言われてる?」
「一年と同じらしいです。二週間くらい……ですかね」
追及されるのではないかと思うと、那賀はこれ以上この会話を引き延ばしたくなかった。
目の前で小首を傾げながら笑顔でこちらの話を聞いている、というより引き出そうとしてくる先輩と早く別れたい。
もういい、と言ったはずだ。
それならもう、こうしてズルズルとここに居る意味なんてどこにもない。
それなのに、無理やりにでもここから出ていこうという気が起きないのは何故だろう。
その矛盾がまた気持ち悪くて、喉の辺りになにかがつっかえたような違和感をおぼえる。
麻衣は朗らかな微笑を崩さぬまま、那賀の顔を覗き込むように少しだけ身を乗り出した。
「仮入部期間中は、那賀君は自分の入りたい部活を探して。私も他の部活の友達いるし、必要なら紹介したりってのも部活によっては可能だから。それで見つかれば万事解決。でしょ?」
「……ま、そうですね」
那賀の返事は歯切れが悪い。
それも当然、麻衣のこの発言は今までの会話を聞いていたのかと不思議に思うほどだった。
実際那賀がそのように宣言したこととはいえ、本心はそうでないとついさっき安土が見抜いたばかりだというのに。
おかしい、と那賀は自らの我儘に自嘲した。
自分で望んだ会話の運びのはずなのに、どうしてこんなに不満の気持ちが燻ぶるのだろう。
分かっている。
本当は、全てぶちまけてしまいたい。
だけどそんなことはできない。許されるわけがなかった。
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