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それだって決して最善の方法とは言えないが、那賀が迷っている間は無理に決められるものでもない。
仮入部期間中に落ち着ければよし、間に合わなければの最悪の事態を回避する方法としては、このちくわ部は最適とも言える性質を持っていた。
「……どうして、そこまで」
那賀の口からは拒絶の言葉ではなく、戸惑いが漏れる。
もはや呆れの境地だった。
この人たちは、何故こんなにも俺を構うのか?
尽くしたところでなんのメリットもないのに。
「そういうタチだから、かな。那賀君だって本当は困ってるんじゃないの?」
麻衣は笑う。
ただ単純に純粋に、僅かに口角を持ち上げて、頬を緩ませて。
それが自らの言葉を受け止めてもらえた安心からくる笑顔であることなど、那賀にはわからない。
むしろ不可解な、不思議なものとして映った。
那賀の疑問の答えは簡単なもので、ただ餌をちらつかせた彼を放っておけないくらい、それこそ馬鹿なほどに世話焼きの心配性三人組だったからだ。
そこに計算などなく、ただ気になるからというだけで最後まで走りかねない、愚直なまでに甘い集団。
那賀にとってあまり馴染みのないそれは受け入れ難いものとして映ったものの、悪意であるとも見えなかったため、戸惑いつつも認めるかたちとなった。
「きっと、部活絡みでなにかあったんだよね? それについてはもう聞かない。でも、ここを拠点にしてもオレ達は構わないから……だから」
那賀のやや軟化した態度に内心ほっとしながら、安土は問いを重ねる。
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