思いでの墓標

13/36

399人が本棚に入れています
本棚に追加
/1152ページ
  「一言で言えば、部活しない部活……かな。やることはやってるよ」 それには麻衣が答える。 と言うより、最適な言葉を探して口ごもった安土と自分が説明して構わないのかわからず口を閉ざしていた涼子の二人より先に発言したというだけなのだが。 四人でバラバラのリズムを刻む足音が階段の上へ下へ遠く響く。 人の気配が極端に薄い部室棟は、まるでこの建物の中に彼らしかいないのではないかと思わせるほどに静かだった。 「ええとね、つまり、部活できない人をフォローする部活……なんだよ。しなくてもいいようにする、っていうか……」 麻衣の説明を補足するように安土が拙く言葉を繋げていこうとするが、那賀は怪訝そうな顔をした。 余計分かりづらくさせてどうすると、今度は涼子がずばりと言い切る。 「部活に出たくない人や出られない人の出席を誤魔化してるの。普段は名前通りの活動なんてしてない。いわば隠れ蓑だね。だから黙ってて欲しいって、さっきは言ったんだ」 ちくわ部。 表向き掲げているのは『ちくわについて考える』という活動内容だ。 皆なにかしらのきっかけでこの部活を知って入ってはいるが、純粋に部名通りの活動がしたくてたまらない人など誰もいなかった。 ただ年に二度、部活の活動報告書を提出しなければならない時期になると、ちくわについて真面目に考えてなにかしら活動をでっちあげる。 そうやって何年もこうしてこの名桜学院にあり続けてきた。  
/1152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

399人が本棚に入れています
本棚に追加