思いでの墓標

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  活動報告書はいわば不真面目な部活を淘汰するためのふるいだ。 部活が部活として機能していることの証明であるため、みな部の存続のために真剣に考え、作る。 そして学校側もまた、活動報告書さえ提出すれば構わないという姿勢を長く続けていたため、ちくわ部はちくわ部として今日も『活動』できている。 今までに問題が全くなかったわけではないのだが、それらを何度かくぐり抜けてしぶとく生き残ったうえで『今』がある。 一癖も二癖もある部員がなんとなく集まった結果、ぬらりくらりと雑草のようにたくましくあり続け、こうして連綿と歴史を紡ぎながら存続を許されているのだ。 「……それ、部活出る人が損してね? 出ない奴は労せず帰宅部になれるわけだろ」 「そういうことになるけど、みんな出られる日は出てるよ。自主的に」 那賀は疑問をぶつけるが涼子の返事に迷いや淀みはなく、そうすっぱりと言い切れるだけの裏付けがあることを思わせる。 目的もない、部活に出たくない集団であるはずのくせに出席率が高いだなんて矛盾しているとしか言いようがない。 変わった連中だ、と心の中で独りごちた。 良心の塊のようなこの三人は、そういった不真面目を庇い合う歪んだ良心の煮こごりの中に身を預けているらしい。 朱に交われば赤くなると言わんばかりに『そうなった』のか、元から『そう』なのかは分からなかったし、なんだかどうでもよかった。  
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