思いでの墓標

15/36

399人が本棚に入れています
本棚に追加
/1152ページ
  自分が追及を拒絶した手前あれこれ聞くのもどこか後ろめたいものがあったが、もしかしたら世話になるかもしれない以上、知りたいことだけははっきりさせておくべきだ。 那賀は重たい声で尋ねる。 「……で、普段何やってんの?」 「のんびりしてるだけ」 涼子ではなく、麻衣による迅速な回答に那賀は面食らった。 そんなもの、部活じゃないだろう。 悪びれた様子もなければ、それをおかしいとも思ってもいなさそうな麻衣を見て、那賀は自分とちくわ部との温度差のようなものを感じる。 上級生である彼女がこれだけ堂々としているというのに、なんでそんなことを言うんだとでも言いたげに少し不安そうにしているのはむしろ安土と涼子のほうだった。 麻衣に聞くよりこちらのほうがいいだろう、と矛先を変える。 「……具体的には?」 「お茶飲んだり、お話ししたり……とか、かな」 「うん、ほとんど雑談……だと、思う」 この二人はさすがに後ろめたさを感じているらしく、言葉に若干の濁りが帯びていた。 基本的に那賀のことは『部活を頑張っていたはずの人』という認識をしているからだ。 そういった構えで部活に取り組んでいる生徒はこの名桜学院に大勢いるどころかむしろそれが普通であるべきで、イレギュラーなのはむしろちくわ部のほうということになる。 真面目にやっている大半の生徒にとってはあまりにも舐めきった場所である、という意識は二人の根底に息づいたままだ。  
/1152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

399人が本棚に入れています
本棚に追加