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麻衣がけろりとしているのは、それを理解していないからではない。
部活動の活動密度などそれぞれで、ここはそれがただ極端に薄いだけだと思っているからだ。
言ってしまえば開き直った態度なのだが、ここはそういった構えでいる人が多く、顧問の黛ですらそうであることが最大の盾となっている。
出席日数の虚偽報告について追及されてしまえば返す言葉など誰も持たなかった。
しかし、今の論点はそこではない。
「さっきも言ったけど、やることはやってるんだよ? 部活の活動報告書っていって、活動内容や実績をまとめたやつを出すんだけどね、それは年に二回きちんと出してるもの」
今だ怪訝な顔を崩さない那賀に理解を求めているのか、麻衣はただひたすらに軽い口調でちくわ部のことを伝えていく。
完全に違反しかしていないというわけではないものの、あくまで必要最低限の最低限、ギリギリのラインで生きているだけの話だ。
麻衣が今主張していることに関しては、道理としての間違いはない。
しかし那賀にとっては、いくら説明されようと理解に及ぶ話ではなかった。
なぜここまで整った環境にいるのに、好きなことに打ち込むこともなく無為に時間を浪費するだけの部活に積極的に出席するのか。
そしてなぜそのぬるま湯から、こちらに手を差し伸べるのか。
こうして話しながらも四人は一階まで降りてきて、下駄箱へと向かっていたのだが、ひとりだけ新校舎に下駄箱がある麻衣とは途中で別れることとなる。
最も自分とは遠い世界に生きていそうな麻衣が居なくなったことで、那賀はどこか愚痴るように重たい声を零した。
「……あの先輩、なんでお前らの部活にいんの?」
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