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「どうして、そう思うんですか?」
「だって、安土君達には一応建前を用意してからいなくなったわけでしょ。私の『知らない間』に」
「でも、建前は建前です。本音じゃない……」
表だけ取り繕って裏で笑われるくらいなら、はっきりと不気味だと言われるほうがまだましだと思って生きてきた。
嫌っているならそうとはっきり言ってほしい。
こちらの向けた好意を裏切ることの罪悪感からくる中途半端さなのかもしれないが、それが一番困る。
本当に助かったと思っていないなら撥ねつけてほしかった。
好意がおせっかいと化すのは容易い。
おせっかいだと那賀が感じているなら早くはっきりと伝えてくれたほうがお互いのためだ。
「ま、そのへんは那賀君のみぞ知る、だね。それにしても、安土君が珍しく強く押してたからびっくりしたよ」
そのせいだろうか、と安土は考えを巡らせる。
確かに、日頃の自分からは考えられないほど積極的に那賀を誘ったと思う。
それが強引すぎたのだろうか、いや、そうではないような気がする。
口では拒絶しているのに、目では救いを求めていたからだ。
矛盾している彼のどこに本音が潜んでいるのかと考え、安土は自らの判断で救いの手を伸ばした。
それでもまだ、那賀は応えてくれなかった。
ならばそれが彼の本音なのか。いや違う。
「……まだ、押しが足りてないってことなんでしょうか?」
思い込みならばとんだおせっかいでいい迷惑だ。
こんな奴、嫌われても当然だし仕方ない。
しかしとてもそうとは思えなかった。
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