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それとは質がやや変わってくるものの、那賀に求めているのは同じことだ。
では、那賀に信頼されるにはどうしたらいいのだろう。
今日話したかぎりでは、彼の心を覆う殻は砕けそうで砕けなかったし、むしろ後半は話すほどに新たな殻を作ってしまったようにも思う。
彼がなにを迷っているのかわからない間は、この手を掴んでも大丈夫であると那賀に信じさせるのは至難の技ではないのだろうか。
しかし時間がない。
早めになんとかしないと、彼は不本意な形で部活を選ぶことになりかねない。
それだけはなんとしても避けたかった。
次の日も風のない快晴だった。
俊介と答え合わせをしたかったが、どうやら二人はまだ美緒の部屋で眠っているらしかったのでそっとしておくことにする。
今日は何時ごろまで家にいてくれるのかも聞いておけばよかったとほんの少しだけ後悔したものの、俊介に頼るのはもっと自力で悩んでからにしようと思い直した。
同性であるせいか、姉の恋人という絶妙な距離感のせいか、大らかな性格のせいか、どうもすぐに頼りたくなってしまっていけない。
那賀とは、教室で会うことになる。
なにかと邪魔するもやもやしたものも、那賀に直接コンタクトを取る事で晴らすのが一番手っ取り早いだろう。
「おっはよー! ねえねえ、転校生ってどれぇ? まだ来てない?」
「おは……や、ちょ、苦しいって」
しかし教室でまず安土を襲ったのは、瑠維による洗礼だった。
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