思いでの墓標

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  といっても彼女も目当ては那賀だったらしく、後ろから安土に飛びつきながらも視線は教室の中を探しだす。 そもそもオレだって今来たばかりで分からないのに、という不満は飲み込んで、瑠維のお望み通りに転校生の姿を探して軽く指差した。 瑠維は安土を盾にするようにしながらそちらに視線を向ける。 「あそこにいる男子、右から二番目」 「へえー、なかなかじゃん」 那賀はこちらに気付いた様子もなく、もしくはあえて無視して、運動部に所属していそうな男子数人と談笑していた。 その少し奥で話している女子のグループがちらちらとそれを伺っており、那賀の転校生としての鮮度がまだ人の興味を惹きつけているのがわかる。 「なかなかって、何が」 「もち、顔」 またか、と安土は盛大にため息を漏らした。 瑠維はしばしばこうして自らを高みに置いて周囲を格付けする。 まずは、容姿で。 そりゃ話す前に得られる情報は容姿しかないのだから、それで印象を決めるのもわからなくはない。 だが限られた情報だけで満足したように決めつけてしまうのはどうなんだ、と言いたかった。 自分が不気味がられた頃を思えばそれを当たり前とする人が多いのかもしれないと思ったが、それでもひっかかるものがある。 そんな安土の心中などため息から察してやるつもりはないとでも言うように、瑠維は彼のブレザーをちょいちょいと引っ張りながら、弾んだ声で続けた。  
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