思いでの墓標

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  昼休み。 麻衣を含んだ三年生四人と、安土と涼子の六人は部室に集まっていた。 こうして部員の一部で集まって昼食を摂る習慣は、誰かがいつのまにか始めていたもので、安土が入部したときには既にそうだった。 誘われるかたちでその集まりに参加するようになり、今ではこれが定番メンバーである。 部室のソファは満員御礼、中央のテーブルを囲んで向かい合った。 「……厳しいです」 三年生には、ある程度麻衣の口から昨日のことが伝わっている。 安土は苦い声を漏らした。 結局那賀とまともなコンタクトはとれていない。 席は決して近くはなかったし、休み時間は近場の男子生徒と話し始めてしまっていたので、そこに割り入ることなどできなかった。 そうして挨拶すら一言も交わさぬまま、なにもできなかったということしか報告することがない。 「それで、水谷先輩。一応、部室のリストをもらえませんか」 「ええ、わかりました。しかしその、那賀君……ですか」 水谷弘希は口元に手をやりながら顔に困惑を浮かべた。 彼はこの場にいる三年生唯一の男子にして、『部外者』だ。 身長は低めで、顔立ちも幼く中性的、さらに全体的にほっそりとしているせいで、男子制服さえ着ていなければボーイッシュな女の子に見えなくもない。 彼はちくわ部ではなく、信憑性の低いゴシップ記事ばかりの新聞を作る『真聞部』の部長だった。  
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