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同意を求められた四人目の三年生、岡野奈津は無表情でこくりと頷き、麻衣は苦笑して首を傾げる。
美琴に完全同意というわけではなくとも、今ここで何を話しても無駄であることについては二人とも異論なしということのようだ。
「ほら、さ。それより一年生だよ。適当でいいから今年も勧誘しとこっか」
そうして那賀についての話題は、驚くほどあっさりと終わりになって、その名残すら部室からかき消えてしまうのだった。
教室に戻り、安土は水谷の発言を反芻する。
後ろめたいものはない、言いづらい。
それがなにを意味するのか、自分の予想は正しいのか。
安土は困ったことに、水谷姉弟との接点があまり多くなかった。
唯我独尊を絵に描いたような姉の詩織の一歩後ろで従者のように静かに佇んでいた弘希。
姉が同じ場にいると、彼はほとんど口を開かなかった。
というより姉がよく喋るので、それをただにこにこと笑いながら聞きつつ必要なときのみ声を出すといったようなものだ。
つまり、水谷弘希のことをよく知らない。
弘希がどんな思いで那賀のことを隠すのか推し量ることができない。
詩織はもっと分かりやすかった。
こちらが欲する情報だとわかれば焦らすくせに教える気が無かったり、その逆に教えるつもりなのにあえて渋るそぶりを見せたりする。
ところが考え込むと口を滑らせやすくなるのか、それとも誰がどこまで何を知っているのかに気を回せなくなるのか、ちくわ部員と一緒に『悩み始め』ると情報を零してしまうことがある。
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