思いでの墓標

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  気持ちの篭らぬ口先ばかりの挨拶を済ませると、各々部活用のサブバッグやなにやらを片手に席から離れていった。 ――今日から正式に部活動が開始する。 「……あ? どしたお前」 「邪魔ー! 先生には用事ないのっ」 出席簿片手に教室から出て行こうとした黛は、小柄な人影とぶつかりかけた。 黛の痩身との衝突を避けてわずかによろめいたそれは瑠維だった。 どうやら早くHRが終わって待っていたらしい。 彼女は教室の外、安土のすぐそばのドア付近に居たのだが、生憎今の今まで教室内の誰にも気付かれることはなかった。 「まだいるよね? よーし。……ねえねえ、ナガくーん?」 瑠維はすぐさま体勢を持ち直すと、黛を押し退けるようにして教室に入ってくる。 安土にちらりと一瞥を零したものの、それからすぐに那賀の姿を認めてそこへと駆け寄った。 なんだあいつ、という呆れたような黛の呟きが微かに聞こえたが、そのまま足音に溶けて遠ざかる。 「え、成宮さん……?」 「那賀君と話したいんだって。今朝言ってた」 鞄を片手に掴みかけていた涼子が驚き混じりに呟いた名前を安土は掬ってやった。 不安そうな瞳で彼を少しだけ見上げてから、涼子の視線は那賀と瑠維に注がれる。 安土が動かないのを感じとり、それに従うことにしたのだった。  
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