思いでの墓標

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  「ええと、ごめん、誰?」 「隣の。成宮瑠維。ルイでいいよ。昨日ウチの部来たんでしょー?」 柔和なよそ行きの笑みで応じた那賀を、瑠維は早速自分のペースに巻き込んでいる。 快活な声ではきはきと尋ねる瑠維は周囲を憚らなかった。 部活へと向かう生徒たちがちらちらと二人を見やってから出ていくが、それを意に介することも、彼の応答を待つこともなく話し続ける。 「なんかぁ、ワケありの人?」 首を傾げて見上げてきた瑠維に、那賀は苦笑を漏らした。 呆れだとか、嫌悪だとか、そういったものを覆い隠しきれずに薄っすらと透かせたような笑み。 「……そんなこと聞いてどうするの?」 質問を質問で返し、瑠維の向こう側の安土を見た。 ――お前がけしかけたのか。 そう言われた気がして、安土は身を凍らせる。 ぞくりと走った感覚に居心地の悪さをおぼえるが、そうなったところでどうしようもない。 しかし瑠維は振り返ることなく、那賀をじっと見つめたまま答えた。 「ルイが気になるからだけど? あ、言っとくけどあの二人関係ないから」 ぴんと立てた人差し指が後ろを指す。 それでもやはり視線は後ろを向かない。 「『まとも』な部活やんないの? なんで?」 瑠維は繰り返す。 ぱっちりと開いた双眸は那賀を捉えて離さずに、答えるまで開放はしないという見えない枷のようだった。  
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