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出席番号一番になってしまうことが多いのは、安土、という苗字の家庭に生まれたからには宿命に近い。
教室の席も学期の頭は出席番号順で、今年も見事一番を獲得した安土は去年と同じく最右列の最前の席に腰を落ち着けることとなった。
周囲を軽く見回してみれば、既にいくつかのグループは談笑を始めている。
見知らぬ顔ばかりのグループもあれば、全員知った顔のグループもあり、とどのつまり去年から仲の良かった者同士でくっついているのだろう。
新しいクラスに新しい友達、なんて、実際のところは幻想でしかない。
まずは知己なり顔見知りなり、ある程度引き込めそうな親密度の誰かを味方につけた上で、環境に慣れること。
人脈の開拓など、普通であれば労せずともなんらかのきっかけで勝手に進んでいく。……普通であれば。
「なんだか、去年とあんまり変わらないね……」
後ろから抑えた声量が投げかけられて、振り返り苦笑する。
出席番号二番、一之瀬涼子。
安土の姉である美緒同様、少しつり目がちで背中まで届くロングヘアの少女である。
ただ美緒との違いとして、その顔を見れば同時に認識できるアンダーリムでスクエア型の眼鏡と、後頭部の下の方で左右に分けてヘアゴムでまとめ、胸元のほうへと流した髪型と――常識と羞恥心をきちんと持ち合わせていることが挙げられた。
漆黒で癖の無い髪は乱れなく隙もなく、それは着衣にも同じことが伺えて、一之瀬涼子という人柄を滲ませている。
規律やルールへのストイックさを数値化したならば満点を取れそうなほどの優等生ではあるが、満点が必ずしも適正値でなかったことが彼女の抱える問題だった。
![image=449568394.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/449568394.jpg?width=800&format=jpg)
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