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下手を打てば、瑠維は那賀に対して取り返しのつかないことをしてしまう。
それに彼女自身そうなる可能性を全く考えていない。
それだけがただ不安だった。
お願いだから、あんまりな言い方はしないでくれと、心の中で祈る。
「まあ事情とかあるんでしょ? でもさー、ルイは知らないんだもん。はっきり聞くなとも言ってないみたいだし。構って欲しいのかほっといてほしいのかはっきりすればぁ?」
那賀は苦虫を噛み潰したような顔を隠すように、目元に手をやる。
数度軽く首を振り、椅子を引いてそこに腰を降ろした。
瑠維も近場の席を勝手に借りて腰を落ち着ける。
ふうとため息を挟んでから、瑠維は呼吸するのと同じくらい容易いもののようにすらすらと語り続けた。
「今ならまだ間に合うよぉ? 『めんどくせーから部活やりたくないだけでーす』って言って、『仲間』になれるよ? あそこのみんなは優しいから、きっとそっとしておいてくれるし」
那賀は答えない。
先ほどよりはやや和らいだものの、眉をわずかに顰めた、決して穏やかとは言えない表情を浮かべていた。
かといって怒っているように見えるわけではない。
通り越して、瑠維の刺す言葉を受け入れて向き合っているようなそんな表情だと、安土には感じられた。
「……ねえ、ナガくん。それはしたくないんだよね? もー言っちゃいなよ。楽になっちゃいなよ」
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