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疑惑に満ちた眼差しでじっとりと安土を見るジンに、強く否定する。
美琴に暴力など振るわれたことなんて無いし、誰かに振るっているところだって見たことが無い。
どうして急に暴力だなんだという話になるのか分からなかった。
「そっかーモモちゃんは知らないんだねぇ。美琴が一年の時は、辞書入った鞄で殴られたりしてたんだよ、俺」
「ジンの場合自業自得じゃないの?」
しかし今度は菊池がじっとりとした視線をジンに向ける。
菊池は菊池が小学六年生の頃ここに引っ越して来た、言わば途中参加の幼馴染らしいのだが、さすが何年もジンや美琴のことを側で見ているだけあって、図星らしかった。
ジンは逃げるように視線を泳がせる。
……美琴に暴力を振るわれていたのは自業自得ということで相違ないようだ。
「そ、それよりさーシュウくんもさ、かえでちゃん、いい子みたいで良かったじゃん?」
卑怯なことに、安土と美琴の話からあからさまに逸らし、逃げるジン。
作ったような明るい声で、修平に話題を向けた。
とはいえ美琴との関係に深く言及されても反応に困るので、修平に矛先が向いてほっとしてしまう。
手を繋いだとかそういうことを、美琴の了承なしに話していいのか分からないからだ。
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