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いつのまにか、教室には四人だけとなっていた。
それぞれ意識を注ぐ対象が狭すぎて、あるいは興味がなくて気がつかなかっただけで、本当はとっくに四人きりになっている。
席に座ったまま俯いている那賀と、それと向かい合うように座った瑠維。
固唾を飲んで見守っていた涼子も、僅かながら緊張を緩めていた。
教室は沈黙のなかに埋もれようとするが、外から聞こえてくる運動部の声がそれを許さない。
活気と熱が伝わるようなそれとは対照的な空気が重たかった。
そうしてようやく、教室の空気が震える。
「……俺は」
那賀の重苦しい声に応じて、瑠維は先を促した。
うん、それで? 全く悲壮感もなければ同情的な響きもない、ただの相槌。
「バスケ、やってたんだよ」
「へぇ、ルイも中学のときバスケやってたよぉ」
「成宮さん」
声を弾ませた瑠維を安土は制した。
同じ部活に籍を置いていたことに対するシンパシーなど、今の那賀にとっては地雷に相当すると判断を下したからだ。
顔だけ振り返り、どうして、と目で訴えてきた瑠維に首を振って否定の意を表す。
「今は、できねーけど」
「ふーん」
那賀はついに語り始める。
興味なさそうに、というより安土に止められたことでやや不機嫌になった瑠維は適当だった。
「つまり、那賀君は。『やりたいことをやるのが難しい理由』がなにかあるから……昨日?」
涼子はゆっくりと言葉を選びながら尋ねる。
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