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こんなに沢山の感情が渦巻くだけ、バスケが好きなのだ。
目の前で仲間達が練習している風景に自分が混ざれない悔しさは、分かるとまで断言できずとも想像はできる。
そんなことで逃げ出してしまうなんて、とはとても言えないが、こんなにも思いをかけていたバスケ部から離れる理由としては、それでも弱いものに思えた。
瑠維の目線は完全に非難するときのそれだったが、那賀は特に何か反論することもなく受け止める。
「その通りだよ。……あとは、そうだな。このままバスケ続けて、しがみついて、必死になって、なんになるんだろう、って思ったってのもある。……自分に負けたんだよ」
「……私も、それ、なんとなくわかるかもしれない」
那賀の吐露に同調し、涼子は俯く。
多少質は変わるものの、涼子も似たような悩みを抱えていた。
教師の両親、元生徒会長の兄。
彼らが求める『理想的な生徒』でなくてはならない強迫観念と、親の傀儡としてしか生きられない自分に疑問を抱いた結果、ちくわ部に籍を置き続けることとなる。
手探りで進むことは怖い。
しかし、ある程度敷かれたレールを進むだけというのも、質の違う恐怖に襲われることになる。
我儘で臆病。
未来に対する選択肢が無数にある若い身だからこそ生まれる恐怖だった。
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