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おそらくは那賀も同じようなものだ。
このまま走り続けた向こう側への不安が膨らんでしまった。
「部活推薦で入ったって言ったろ。強豪校で、レベルも高かった。……怖かったんだ」
周囲との食い違いや、置いていかれることの辛さは、涼子だけでなく瑠維や安土にとっても痛いほどにわかる。
それを『自分に負けた』と素直に評せる那賀は自分よりずっとしっかりしている、と安土は居た堪れなさすら感じていた。
瞳の色や、聴力の問題からくる周囲との食い違いに疲れた結果、安土は内側に閉じこもり、人と接することに臆病になった。
かなり改善されつつあるが、とにかく下手に出て相手の気分を損ねないよう努める癖は根深く、人との距離感の測り方や機微を察することは今もまだ上手くできないままでいる。
あの時くじけずに堂々と振舞っていれば、こうも付き合い下手にはなっていなかったのではないか、と思うと、やはり安土も『自分に負けた』のだろうと自身を咎めた。
那賀の独白は続く。
「バスケよりもっと、なにか……あるんじゃないかとか、な。才能があるって自分で信じられりゃ違ったかもしれねぇけど……他のナニカだなんてあるか分からないし、迷うくらいなら、続けたほうが良かったに決まってるのに」
何かに打ち込んできた人は、それを折られた途端に弱くなる。
たとえそれが修復可能な柱だったとしても、折られた瞬間はそれどころではない。
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