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「ま、でもやめちゃったもんは仕方なくない? それともどーすんの、気持ち整理つけたら前の学校戻るの? ここのバスケ部入る?」
やはり瑠維は棘のある物言いをしながら、悪びれる様子もなく、溌剌と人を咎めてみせた。
言われた那賀は少しだけ迷った様に視線を泳がせる。
「……そうだなぁ。みっともねぇけど、本気でやりたきゃ戻るかここで続けるかするわ。でもな、そこに迷いがあるってことは、本気じゃないんじゃないか? とも思うわけ」
あくまでまだ迷っている、という言い方。
本気で貫き通すだけの思いがなくては進めない道であると、本人は思っているらしかった。
そして彼は充分にそれだけの気持ちを持っていたように安土には思えたが、まだ足りないという。
走り切るエネルギーに自信があったのは、あくまで過去の話のようだ。
「んじゃ、新しいナニカを探す方向性?」
だんだんと興味も薄れたのか、瑠維の声から抑揚の波が落ち着いていく。
面白そうな転校生、ちくわ部に関わりそうな同級生の新人、という鮮度は、既に彼女の中で失われた。
蓋を開ければ瑠維の大嫌いな逃げと迷いの抱き合わせ。
どうしても人に合わせられない性格は損でありそうにしか思えなかったが、これでどうしてか瑠維には友達が多い。
強引とも呼べる姿勢に惹かれる人もいるのかもしれない。
小学生時代に太っていたことが理由で虐められていたというが、性格に問題はなかったんだろうか、と安土は内心疑問だったが、声には出さずに飲み込んだ。
虐められっ子から大変身してみせたことが自信となった結果、こうしてやや自己中心的で物怖じしない性格になったのかもしれない。
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