硝子の部屋

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  しかし安土は嘘が壊滅的に下手なので、涼子が先に道を塞がないとボロを出しかねない。 その場で必要な嘘もうまく使えないことは、安土の長所でもあるが短所でもあった。 涼子がうまく繕ったおかげか、那賀は少しだけほっとしたような顔をする。 「そっか。会う機会があったら直接言う。でも、たぶん安土達のほうが先にコンタクト取れるだろうから、よろしく頼むわ」 「う、うん」 ひとまず涼子に合わせる形で安土は頷いた。 そうして、那賀を巡る話し合いは一応の収束を見せたことになる。 もう教室に用事はないので、各々下校モードへと切り替わっていた。 それでもまだ窓の外から響いてくる声は変わらず、部活終了時刻まで精を出しているであろうことを伺わせる。 僅かに陽が傾きかけ、ほんの少しだけ空の色が霞んでいた。 「それでさ、お前ら部活行くの?」 といってもせいぜい用意済みの鞄を肩にかける程度のものだが、そんな空気の中で那賀が問いかける。 「うん。というよりちょっと、部室棟に用があるって感じかな」 「え、部室には来ないってこと? 私は普通に部室行こうかと思ってたけど……」 「ルイは帰るー。なんかやる気出ないしぃ」 それぞれ安土、涼子、瑠維。 まるであらかじめそういう予定だったかのような口ぶりの安土に対して涼子が驚き、瑠維は、それじゃあねー、と言いながら手をひらりと振ってそのまま教室から出ていってしまった。 最初から最後までマイペースを貫き通すその姿勢はいっそ尊敬に値する。  
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